村上春樹「ハナレイ・ベイ」

米国逆輸入の村上春樹短編集を読んで、村上春樹作品の中で「ハナレイ・ベイ」がやっぱり一番好きかもしれんことを再確認。

f:id:bluesonic89:20150111165139j:image

昔は「風の歌を聴け」「羊をめぐる冒険」とかがベストだったけど、段々歳を取るごとに「アンダーグラウンド」が好きになってきて何回も読み返したりしていて、今回「ハナレイ・ベイ」を読んで、いまの自分はこの作品を最も求めていることに気づいた。

村上作品を読んでいると色んな場面で心が動かされるシーンがあるんだけども、「人生における様々な悲しみ」を描いてることが一つの大きなテーマになってると思う。

ノルウェイの森」なんかは、ただただ悲しくてひたすら悲しいという、若者の悲しさを色んな角度から色んな形で表現していて、何回読んでも胸が締めつけられる気がする。

或いは、「ねじまき鳥クロニクル」に出てくる歴史教師が戦時中に閉じ込められた井戸の中での経験により、その後の人生をただ消化していくだけとなったりするのなんかは、プロ野球選手でも何でもない自分にとっては想像もつかない悲しみだったりする。

そして、「ハナレイ・ベイ」に描かれた悲しみは、なぜかは分からないのだけど、この作品だけは読む度に心が安らぐ感覚になる。

日々の騒々しい日常から切り離されて、ハナレイ・ベイの海が自分を包み込んで癒やしてくれるような気持ちになる。

誰にも何度も何度も読み返して自分にとってかけがえのない物語を持っていると思うけど(村上春樹にとっての「グレート・ギャッツビー」のように)、いまの自分にとっては「ハナレイ・ベイ」がそれに当たるみたいだ。